奈良&東大寺
提灯に記されている「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」は、古今和歌集で詠まれており、小倉百人一首の歌番号7番で、阿倍仲麻呂が詠んだものですが、紀貫之の書いた土佐日記でも引用されています。
現代語訳をすると、「天を見ると美しい月が昇っている。あの月は、あの月は、遠い昔、遣唐使に出かける時に祈りを捧げた春日大社のある三笠山に昇っているのと同じ月なのだ。ようやく帰れるのだなあ。」という意味です。
阿倍仲麻呂は、遣唐使として唐に渡り、そこで玄宗皇帝に気に入られました。
その為、なかなか日本に帰る事が許されませんでした。
しかし、30年の時を経て、やっと日本に帰ることになったときの送別会で詠んだのがこの歌です。
現在と違い、奈良時代には船で中国から日本へ帰るのはなかなか困難で、結局日本に帰ることができず、中国に戻り72歳でその生涯を閉じました。
この歌で阿倍仲麻呂が懐かしんだ春日大社の周辺は、奈良でも一番の観光名所です。
奈良駅から表参道を上り、興福寺や東大寺大仏殿など、提灯にも描かれているような数多くの観光スポットがあり、それらを辿りながら歩いていくと到着するのが「春日大社」です。
三笠山は春日大社の後方にある標高283mの山で、万葉の舞台となった古の名勝です。